2025.11.27

味の街でとんかつにレンタルレコード……? 知られざる実はあったウエスト図鑑

味の街でとんかつにレンタルレコード……? 知られざる実はあったウエスト図鑑

福岡の「ウエスト」といえば、「うどん」というイメージが定着して、20年近く経つ。筆者が小さい頃は「焼肉」のイメージだった。

そんなウエストは、もともと「味の街」という飲食店の複合施設のような形態で広がっていた。国道沿いに「ウエスト 味の街」と書かれた大きな看板がピカピカ光っている光景が今でも思い出せる。

このタイプの看板は1967年1月熊本店から始まり、長年使用されていた。

しかしながら、老朽化によって、撤去が進められ、2023年4月に麦野店のものが撤去され、姿を消した。

麦野店(旧味の街看板)

もともと「味の街」は、ワンストップで食を楽しめる場の提供するというコンセプトだった。

「今日は何を食べようか?」と迷ったとき、いろいろなジャンルを選べる場所にしたい、という思いが込められている。 多業態を一か所に集めることで、家族やグループ、ドライブ途中の利用など幅広いシーンに応えられるようにしていた。

外食のあり方が変わっていく中で、「多様な食」「選べる食」を提供していくという先見性が「味の街」にはあったようだ。

その中でまず人気が出たのは「焼肉」で、その次が「うどん」だった。現在では、ウエストといえば「焼肉」か「うどん」というイメージが定着している。

現在では、うどん、焼肉以外でのウエストブランドの業態は生そばウエスト、カフェと中国料理店の「中華飯店」のみである。

生そばウエスト 御笠川店
カフェ&和定食ウエスト 麦野店
中華飯店ウエスト 麦野店

人気が出なかった業態は、すべて「消滅」の運命を辿ったというわけだ。

そんな「消えていったウエスト」が気になった編集部はウエスト本社から、当時の写真を入手した。この記事では「焼肉」や「うどん」の影で消えた、今はないけど「実はあったウエスト」に思いを馳せてみよう。

実はあったウエスト①和食

旧二日市店

写真を見て、なんだかうっすら思い出した。ウエストの「和食」。

店舗に「和食」って看板が出るの、今見るとなかなかインパクトがある。

自然野菜や豆腐料理も食べられたようだ。営業中の頃に書かれた来店ブログなどを調べてみると、焼き魚定食や天ぷら定食などもあったらしい。

現在もそのエッセンスは、麦野店の「カフェ&和定食」のウエストで引き継がれていると考えてもよいだろう。

実はあったウエスト②カレーライス

旧麦野店

これはまったく覚えていない。ウエストのカレーライス。あなたは覚えているだろうか……。

2004年のふくおか経済の記事が、なんとまだ残っていた。当時は100店舗を目標に出店していくつもりだったようだ。当時は焼肉、うどんに続く「第三の柱」として、期待されていた。

実はあったウエスト③とんかつ

旧新宮店

こちらは全く覚えていない。とんかつウエスト。「とんかつの館」という看板に味がある。どんなお店だったのだろう。新宮の「味の街」にあったようだ。

実はあったウエスト④レストラン

旧新宮店

こちらはなんとレストランのウエスト。まさか、ウエストがファミレスをやっていたとは。こちらも新宮の味の街にあった様子。店内が気になるものの、写真は残っていない。

実はあったウエスト⑤ステーキハウス

旧新宮店

ついに写真が白黒に。立て看板には「本日ステーキハウス誕生」、のぼりには「WEST新宮店にステーキハウス誕生」と書かれており、オープン当時の貴重な写真であることがわかる。

「ステーキ&ハンバーグ ウエストのステーキハウス」という店名も、なんのひねりもなくて潔い。これでこそ、ウエストだ。

実はあったウエスト⑥焼鳥

旧大橋店

じつは焼鳥なんてものもあったのだとか。「焼鳥」と書かれた提灯がいい味を出している。

「食事処」という提灯もあり、「釜めし」の看板が確認できる。ディスプレイを見ると、釜めしの釜が並んでいるようにも見えるが、どんな店だったのだろう。

実はあったウエスト⑦天ぷら

旧大橋店

ウエストの天ぷら専門店。現在、うどんウエストでは天ぷらはすべて揚げたてで、大きなウリの一つだが、かつては天ぷらの専門店もあったのだ。

高級店のような雰囲気のある玄関で、看板には「名代」の文字も見える。

実はあったウエスト⑧洋食

旧大橋店

「洋食屋」とだけ書かれた洋食屋を初めて見た。味の街ではすべて「ウエスト」なので、わざわざ洋食屋に店舗名はない。ただ、ひたすらに「洋食屋」なのである。

右に天ぷら屋の看板が見える。そう考えると、なかなか異様な光景だ。

実はあったウエスト⑨レンタルレコード

旧大橋店

もう味の街じゃない。街だ。なんとウエストは、味の街の中でレコードレンタルもやっていたのだ。さすがに「JACK」という店名が付けられている。

旧大橋店

なんと店内の写真も残っていた。こじんまりとしているが、いい雰囲気である。前列には「IRON MAIDEN」のレコードが見える。

「ウエスト味の街」の「洋食屋」で何らかの洋食を食べて、ヘヴィメタルのレコードを買う。そんな日常が大橋に存在していたと思うと、胸が高鳴る。

写真は残っていないものの、ウエストの業態はまだまだある

写真が多く残っていた「ウエスト味の街」旧大橋店

様々な業態のウエストを紹介してきたが、写真に残っていないだけで、実はあったウエストはまだまだある。紹介できなかったその他のウエストをリストにして、紹介しておこう。

・イタリアンレストラン
・ラーメン
・サウナ
・テニス
・コンビニ
・炉端焼き
・鉄板焼き
・しゃぶしゃぶ
・ビストロ
・お茶漬け
・回転焼
・パスタ
・うなぎ

なんて楽しそうなんだ、味の街。「サウナ」とか「テニス」とかもあるのか!と驚くが、そこに一際存在感を放つ「お茶漬け」。お茶漬け専門店なんて、聞いたことないぞ。ウエストのお茶漬け。どんなものだったのだろうか。

創業者の境豊作氏の「やってみなはれ」精神で、とにかく新業態にも果敢にどんどんトライしたというウエスト。そのトライがあったからこそ、今でも生き残っているのかもしれない。

あぁ、味の街。もう今は行きたくても行けない、夢の街。

今でこそ「うどん」「焼肉」のイメージしかないかもしれないが、せめて、この記事の中だけでも「実はあったウエスト」を思い出してくれたら幸いだ。

>>ウエストの公式サイトはこちら

写真提供・取材協力:ウエスト

ライター情報

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大塚たくま

「福岡のなかみ」編集長。福岡のフリーライター、編集者。
独自のバズコンテンツ制作ノウハウとSEOの知見をかけ合わせたコンテンツで、便利で面白い記事をつくる。
独自のキャッチーな切り口で深く取材するスタイルを追求する、株式会社なかみの代表取締役。

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